About us

Behind The Rape  私たちの活動

サイト名である“Behind The Rape ” 直訳すると “レイプの裏側” です。
性犯罪の被害にあった照屋優海さんを支援するうちに、性犯罪事件は被害者と加害者だけの問題ではなく、その裏側にある社会問題も深く関係している事に気づきました。
事件が起こる要因となる社会問題を解決したい、その問題の周囲にある課題を提起していきたい、という願いがこめられています。

支援と取組み

本件で提訴している民事裁判・刑事告訴を支援している支援者によって、照屋優海さんの裁判の支援と、今後の法改正への取り組みを後押しする活動をしています。

2017年6月、性犯罪に関する改正刑法が国会で可決・成立しましたが、まだまだ課題はあります。同じような境遇の方々と繋がっていきたいと思い、今までの取組みや情報をまとめ、今後もここで進捗を公開していきます。

社会的公益性

前提として、私たちの支援活動やサイト運営は社会的公益性が1番の目的です。
それは照屋優海さんの強い願いであり、それに寄り添い支援しています。

裁判を支援していく中で、正義や公平公正とは何か、なぜこのような事件が起きたのか、このような事件が起こる社会は何が問題なのか、などをを一緒に考えてきました。

支援に際し課題や困った事がたくさんありました。専門家の方からのご協力を含め、多くの方々からの支援やアドバイス、他の性犯罪のケースや、報道、情報から、知識や勇気、前へ進む力をもらって、ここまでこれたと思います。

性犯罪にまつわる、裁判活動を通して得たさまざまな情報をシェアしたい、という彼女の強い意向に沿う形で、今後コンテンツを公開していきます。

日本社会における性被害問題への理解が深まり、事件が起こる背景、裁判や法律への関心、また、被害者の健康や被害後の生活、などについての関心や支援を頂けますと幸いです。
事件に巻き込まれた被害者やそのご家族、友人、関係者の方へ支援の輪が広がる事を望みます。

微力ながらも、性犯罪という社会問題への解決ににつながる力になることができればと思います。

実名を公表する意義

実名での公表に違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。事件や取り組みをどのように伝えるか、照屋優海さんと支援者らで話す中で、匿名にする理由はないのではないかという方針になりました。

彼女は被害に遭う前も、今も、変わらず1人の女性として人生を歩んでいます。実名で話す事を決めた照屋優海さんについて、彼女のメッセージと共に下記に掲載いたします。

照屋さんは裁判を通して、当時勤めていた会社のほぼ全ての人間関係を失いました。
仲が良かった人を含む、当時の事件を知る人全員が協力を拒んだからです。

「裁判は時間の無駄、裁判は後ろ向きでネガティブ。前を向いて進むことに時間を使うべき」という趣旨の事を言う人も何人もいました。アドバイスのつもりだったかもしれません。

問題について声をあげ、当然の権利を主張する事が、ネガティブであり裁判は無駄な時間という風に捉えられるのはなぜでしょうか。
重度のPTSDを患いながらも裁判をしてきたのは、判決文の勝ち負けだけが終着点ではないからです。自分にとっての事件の終着点を考えるとき、裁判は事件の問題を解決するための1つの重要な手段です。

私たちは、照屋さんを含む、性被害の事件に巻き込まれながらも裁判をしている全ての方と、その支援者の方々に敬意を表しています。

(*注意:匿名相談も検討が必要な選択肢です。)

原告の照屋優海さんについて

照屋優海 (てるやゆうみ)

1987年1月生まれ(36歳)沖縄県出身。
2011年(24歳の時)に会社の直属上司からレイプ被害にあった。
2016年に加害者と会社と当時の人事担当者を相手に裁判を開始。現在、2審提訴中。
2017年加害者を強制わいせつ罪として刑事告訴したが不起訴処分。
2021年加害者を強制わいせつ致傷罪で刑事告訴。民事裁判は那覇地裁での判決をうけて、控訴し、現在控訴審。

照屋さんからのメッセージ

失ったもの

事件以降、徐々に多くのものを失いました。仕事、人間関係、社会生活、健康、他にもありますが。

一方で被害後に増えたのは、私の新しい呼び名です。「被害者」「当事者」「サバイバー」、裁判を始めると「原告」「被控訴人」「証人」。
病院でも「斉藤さん(仮名)」や「番号札5番」など、偽名で呼び出すようお願いしていました。
このように、被害後はさまざまな場面で名前を出さない事が習慣になりつつありました。
名前を呼ばれることへの安心感、名前への尊厳と誇りも被害にあって失ったものの1つです。

そうやって隠れながら、実名ではない呼び名で呼ばれる事が増えた状況で生き抜いていた私が、最近ようやく気づいたことがあります。

起きたことは、起きたこと。過去が消えることも、過去が変わることもない、ということです。過去からは逃げられないという、いわば当たり前のことです。裁判を通して事件に向き合うと決めました。
私はどう呼ばれようと、事件体験を自分から切り離すことはできず、過去と現在はつながっていて存続していて「照屋優海」はまだ生きている。いま生きているからこそ出来ることがあると思います。

覚悟と成し遂げたいこと

私は法律家でもないし、警察でも検察でも、ジャーナリストでも研究者でもないし、政治家でも、国家機関で働いた経験もありません。大学卒業後に、地元のIT企業に入社した23歳の新入社員でした。

事件含めその後も信じがたい経験を山ほどする羽目になり、平凡でありふれているけど当たり前に幸せだった私の人生は大きく狂わされました。それでも今も昔も、たぶんあなたが街ですれ違う、その他大勢の風景の中の1人です。性加害が驚くほど世の中には溢れていて、全く同じような被害にあった人が山ほどいます。きっと私が話す被害体験も、どこか遠くの誰かの不運で可哀想な災難で、自分とは無関係と思う人も多いでしょう。

私が実名告発をするのは、私は架空の人物でないし、事件が架空の話でもない、今沢山の人に実際に起きている現実を認識してもらいたいからです。実体のある人間が闘っている裁判の行方をリアルタイムで目撃して、身近で実際に起こっている問題として知ってほしいし、いまこの瞬間も被害にあっている人がいて、今すぐどうにかしないといけない緊急性のあることだと意識してほしいし、この闘いや、同じように渦中で声をあげている当事者たちを支えてほしいという思いと覚悟からです。

性犯罪は「どうしても起きてしまう不運な事態」ではないと思います。

事実の摘示(告発)という表現活動を通して、もし以前からそれらの情報や知識を持っていたら、もし被害を受ける前に知っていたら、あの日私はおぞましい事件を回避して自分の身を守る事ができたかもしれない…というような性犯罪の周辺にある情報の共有をしたいと考えるようになりました。

事件後に関しても、正しい性犯罪への知識があれば、即座に解決策を実行し然るべき機関に助けを求め、最小限の被害におさめられたはず、もっと早く人生と折り合いがつけれたかもしれない。そんなふうに思うことが、本当にたくさんありました。

私が10年かかって理解した情報や知識などを共有していきたい思います。同じように被害にあった方々へ経験と情報を伝え、被害にあっていない方々はご自分や身近な大切な人を守る知識として、役に立つ事ができればというのが切なる思いです。

私はこの闘いを1人ではできません。支援してくださる方々のサポートがあってこそ、時間をかけて、たくさんの人と一緒にこのサイトを作っています。
みんなでまとめた情報を記していくことができればと思います。今は1人ではありませんが、それでも私たちに出来ることにはリミットがあります。

今も私は無力感を感じ、孤立していく状況で孤独に思うことだらけです。同じように性犯罪や性暴力問題にうんざりしながら向き合っている方々と繋がり、一緒に支え合うことができればと思います。
お力を貸してください。よろしくお願いします。

                           2022年6月  照屋 優海